
ファッションにおけるサステナビリティ課題を学んだ
開催の目的・背景
ドキュメンタリー上映を「対話のきっかけ」に
学生と企業が共に考えたリペアとサステナビリティ
知識として「サステナビリティ」を学ぶことと、それを自分自身の行動として実感すること——その間には、どこか距離がある。日本女子大学家政学部被服学科の勝又先生は、そんな課題意識を持ち続けていました。いくら講義や文献を通してサステナビリティを頭で理解していても、学生が「腹落ち」して自らの行動に移すことはなかなか難しい。特に、安価でトレンド性の高い服が身近にある現代において、「修理して長く使う」という選択肢をリアルなものとして届けるには、どうすればいいか。その模索の中でパタゴニアとの接点が生まれました。
きっかけは、学生を通じてパタゴニア目白ストアのリペアの取り組み「Worn Wear」と勝又先生が出会ったことでした。課題意識を共有したふたりは、単発のイベントで終わらせるのではなく、学生の行動変容を長期的に見守るプログラムを一緒に描き始めました。
今回の「リペアカフェ」上映会は、そうして生まれた1年間の学習プログラムの中で、衣類廃棄の現状を学んだ後の「事例に触れる」機会として、意図的に位置づけられたものでした。検索や講義では届かない、「実際にそれを実践している人たちの姿」を目の当たりにすること、そしてその上で自分たちなりの言葉で考える対話の場を持つことを通じて、知識を「自分ごと」へと変えていくという試みとなりました。
開催概要
| 主催 | 日本女子大学(協力:パタゴニア東京・目白ストア) |
| 開催日 | 2025年6月17日 |
| 会場 | 日本女子大学 目白キャンパス |
| 企業・団体名 | 学校法人日本女子大学 |
| 所在地/業種 | 東京都/学校法人 |
| 事業内容 | 家政学部、食科学部等、7学部16学科を備えた私立の女子総合大学で、文理融合の多様な学修環境を実現している。 |
| 開催形式 | 今回の上映会は単独のイベントではなく、学生の学びを行動へと繋げるために設計された1年間の学習プログラムの一部として開催されました。 1. 【現状を知る】 衣類廃棄の現状学習(協力:ごみの学校) 2. 【事例に触れる】 『リペアカフェ』上映会と対話 3. 【実践の場を見る】 パタゴニア目白ストアのリペアカフェや鎌倉リペアセンターを見学 4. 【自ら実践する】 文化祭でのワークショップ運営 5. 【学びを定着させる】 1年間の活動の振り返り ※本記事は「2.【事例に触れる】 『リペアカフェ』上映会と対話」を中心に取り上げています。 |
| 参加人数 | 昼の部 約19名(ゼミ生・パタゴニアスタッフ)、 夜の部 約30名(エシカルオープンラボ) |
実施内容
1. 上映
被服学科のゼミでサステナブルファッションを学ぶ学生向けに「リペアカフェ」のドキュメンタリー上映を実施。普段、頭で考えているサステナビリティについて、物語を見るということを通じて捉え直し、「修理して長く使う」ことについて対話するきっかけとすることを目的に実施しました。
※夜の部として社会人向け勉強会「エシカルオープンラボ」でも上映会とダイアログを実施。
2. テーマに基づくグループディスカッション
上映後、学生とパタゴニア目白ストアのスタッフが混ざり、いくつかのグループに分かれてディスカッションを行いました。映画の感想を共有するだけでなく、「自分たちの生活において、リペアをどう捉えるか」というテーマで自由に意見を交わしました。「ものを大切にしたい」「自分で直せるものは直したい」といった変化があった一方で、「もっと『サステナブル』なファッションが可愛くおしゃれなものだと感じてもらうには?」といった、サステナブルファッションの課題に対する鋭い問いも生まれ、より生活の中に当たり前にリペア文化やサステナブルファッションが根付いていくための視点が共有されました。
参加者の反応・アンケート
上映後のディスカッションでは、映画を通じてモノや人との繋がりを改めて見つめ直すような声が多く聞かれました。
「物を大事にすることは、人との繋がりも大事にすることなんだと感じました。映画に出てくる人たちがすごく温かくて、感動しました」
「修理を通じて知らない人同士が繋がっていく様子が印象的でした。日本にもこういう場所が増えたらいいなと思います」
「お母さんから譲ってもらったデニムがあるのですが、これからはもっと大事に、修理しながら着ていきたいと改めて思いました」
「壊れたものを直すというより、ワンポイントで刺繍を入れたり、自分なりにリメイクするところからなら始められそう」
「今まで企業がリペアサービスをやっていることをあまり知らなかった。もっと発信してくれたら、私たちの選択肢も変わるかもしれない」
一方で、リペアやサーキュラーデザインが実際に普及していくための示唆となる、率直な声も聴かれました。
「サステナブルなものでも、心ときめくデザインでなければ着たいとは思えない。サステナビリティと可愛さ・おしゃれさは、両立する必要がある」
「そもそも修理が必要なほど着込んだ服や、強い思い入れのある服をあまり持っていない。「修理したくなる」と思えるようなモノとの関係自体をどう育むかが課題」
「知らない人たちが集まるコミュニティに自分から入っていくのはハードルが高い。固定メンバーのコミュニティではなく、誰でも気軽に立ち寄れる「開かれた場」としてのリペアカフェの形に、可能性があるのでは」
開催後の効果
対話から生まれた学生たちのアクションと、その後の波及効果 上映会での学びや対話から生まれたエネルギーは、文化祭での学生主体のアクションへと繋がりました。ミシン体験会や、Tシャツヤーンを使ったアップサイクルワークショップも企画・実施。また、プログラムに参加していなかった1年生も、パタゴニアのリペアセンター見学をきっかけに、自主的にリペア関連のワークショップを企画・開催する等、「リペアを通じてできることを」と学生たちが主体的にアクションを起こしています。
企業と学生の相互理解の深化 企業側は「かわいさ」「おしゃれさ」へのこだわりとサステナビリティとのジレンマなど、学生たちのリアルな価値観を知る機会となり、学生側は企業の取り組みや想いに触れることで、社会との接点を具体的にイメージできるようになりました。
担当者の声
日本女子大学 家政学部被服学科講師
勝又 淳司 様
単発のイベントで終わらせてしまうのは、とてももったいないと感じています。今回のようにつながりができて、卒業生が『先生、今年もやってるんですね』と顔を出してくれる。そんな風に活動を継続していきたいですね。そして、大学がもっと地域や社会と繋がるハブのような場所になれたらと思っています。この映画は、消費生活アドバイザーや家庭科の先生など、常に新しい情報を求めている専門家の方々にとっても、日本の現状と海外の事例を比較し、考える良いきっかけになるはずです。
パタゴニア 東京・目白ストア
宮腰 早春 様
学生さんたちの『修理するにしても、それが可愛くないと意味がない』という言葉には、本当にハッとさせられました。私たち企業側が忘れがちな、一番大切な視点かもしれません。すぐに何かが変わるわけではないけれど、こうして若い世代に『修理』という選択肢を知ってもらうことが、10年後、20年後のモノづくりのあり方を変えていくと信じています。目先の成果だけではなく、長期的な視点でこうした活動に関わっていくことが、私たちにとってもすごく大事なことだと改めて感じました。

| 企業・団体名 | 学校法人日本女子大学(協力:パタゴニア東京・目白ストア) |
| 業種 | 学校法人(大学) |
| 事業内容 | 家政学部、食科学部等、7学部16学科を備えた私立の女子総合大学で、文理融合の多様な学修環境を実現している。 |
| 関連サイト | https://www.twcu.ac.jp/main/index.html |
